Hideのうんちく工学
慣 ら し 運 転
たまに良く「一番良い慣らしの仕方は?」と質問されます。
また、中古だけど・・・エンジンの回り方が重くて・・・・・
どうしたらいいでしょう?
仕事柄、慣らし運転を行うことがありますので、その経験から
うんちくを書いてもました。


慣らし・・・・と言うと一般的に「エンジン」を連想しますが、機械的に動くもの全て部品について当てはまります。
連休明けの職場復帰したHideにも当てはまります。  自爆 (@_@;)
が、ここではエンジン本体に的を絞っておきます。

■まず、慣らしは何の目的の為に行うのでしょうか?
それは、製品ばらつきを容認し、設計本来の性能を発揮するためにあるのだ。 v(=∩_∩=)

現在の工業製品は大量生産と言えど、かなり精度は高くなってきました。だから・・・人によっては慣らしなんか必要無いと言う人もいます。それはそれで正解なんです。別に、壊れたり、焼き付いたりするわけないしね。

■但し加工技術、材料が良くなっただけで、製品のバラツキはあります。
市販車のエンジンは色々な社内基準をパスして出来上がりますが、それを製品にする場合、当然メーカーもバラツキを考慮した設計をしています。
例えば部品同士材料の強度や成型、加工のばらつきにより・・・クリアランスがきつかったり、広かったり、出来上がったエンジンの馬力やトルクがばらついたりしているのが事実で、本来あるべき性能が出せないと言うことになります。しかもばらついても当然壊れないちょっと過剰な設計になってます。
言い換えると、
設計者が狙った通りのセンター値・図面通りのエンジンなんてあり得ない・・・w(☆o◎)wガーン
と言っても過言ではないと言うことです。

■レース用エンジンは
1時間もベンチ(公園のイスではない (゚〜゚)エンジン専用の専用測定器)で回せば慣らしは完了する。_(‥ )フーン。
何千キロも慣らしで走ってないですよね。何故でしょう?
一般的に市販車のエンジンは少なくとも3000kmとも、「VOLVOなんか5〜6万キロ」ともいいます。
機械的には、性能的な慣らし(出力がもっとも出る)を早く完了させようと思ったら、全開キープで最低4〜5時間回さないと出ません。物によったら10時間以上回したほうが良い場合もあります。

■何故??レース用エンジンは
そうなんです。始めから慣らしがついたのと同じ様に組み立てているからです。
クランクシャフトのプレーンベアリングやタペットのクリアランスは始めから大き目にしたり、ピストンリングの張力を落としたり、バルブを軽量化してバルブスプリングのレートを落としたりして限りなく効率良く回転するようにしています。
言い換えると、
設計者が狙った通りのセンター値・図面通りのエンジンなんてあり得ない・・・と言ったエンジンがレース用のエンジンです。その典型が頂点のF1エンジンと言っても過言ではないです。

■例えば
シビックやビッツのワンメークレースがありますが、ENGの改造禁止なのにワークスッ気が入ったマシン数台はどう見ても馬力が違うというようケースもあります。勿論、レギュレーションでは改造禁止です。
が、各部のクリアランス調整や張力調整などに限って言えば、好き勝手にできるのです。その辺の調整ノウハウを持っているチームのエンジンは驚くほど速く扱い易いものになります。
これも又、設計者が狙った通りのセンター値・図面通りのエンジンに仕立てている。それだけです。

■市販車ではどうしたら良いか???_(・・)φボーー
と言うと、・・・・慣らしによってそれに近い状態・・設計本来の性能を発揮するために作り上げてやればいいのです。
これが慣らしなのだ!!

■Hide的、慣らしでチューン

◎〜1 初期の低速慣らし
  ★低い回転でゆっくり走る・・・と言うことではなく、スムーズに走ることです。
  ★レッドゾ〜〜ン回転の1/2を上限くらいを目安に1000kmほど走ります。

  ×低い回転でゆっくり走ることは、逆に悪影響を及ぼす。
例えば、ギヤミッション車で低回転時にスロットルを大きめに開けるとガクガクと回ることがあります。
燃焼スピードというものはどの回転においてもほぼ一定ですが、低回転時にはピストンがゆっくり動いているため上死点付近で燃焼の最大圧力を受けてしまいます。クランクセンター、コンロッド大端、小端が一直線に近い状態ですから回転運動に変えずらい位置関係で大きなエネルギーが蓄積しています。
このような状況下では燃焼エネルギーは、クランクセンター、コンロッド大端、小端が一直線に近い状態でピストンを押し下げ、各部を痛め、また、ピストンの側面に集中し、シリンダーに強く当たり過ぎてしまうため慣らしどころかピストン、リング、シリンダー等に傷をつけたりすることが考えられます。
ノッキング状態ではそのエネルギーは更に強まります。

よって、ある程度エンジンを回しても、アクセルを開けすぎないでスムーズに走るように心がけることが大切。

◎〜2 高速慣らし
スムーズ慣らしを1000km前後になったら・・・・初回点検でオイル交換!な〜〜んて焦らず、
点検だけにします。
やっと、オイルにも慣らしが着いた頃だからです。ここからが慣らしの本番!

今度は、一気に高回転までブン回します。たぶんATでも2〜3速を固定して回すことも良いかもしれません。
気を付けて下さいね♪
コツはただそ〜〜っと回転だけ回すのではなく、「いかに高負荷・熱負荷をかけるか(スロットルを開ける)か」です。
そう言う意味では、登りのワインディングを全開で駆け上がる・・・と、言うのが良いみたい。そして、クールダウンしながら降りて、また、全負荷で駆け上がる・・・・・・

■何故、高負荷かというと・・・
摩擦面の慣らしと同時に熱負荷をかけてエンジン全体を適度に熱歪を起こさせてさせて、各部を適度に馴染ませる必要があるからです。

×とんちんかんなやり方
高回転で慣らす・・と言って、高速道路でギヤを落として回転だけをあげても、アクセルは余り開かずに、駆動力はかからず熱負荷は低いのであまり意味がないのです。

日をあけながら数日間走って下さい。その後慣らしを気にせず普通に回して走ります。但しオイルレベルのチェックは忘れずに。減っていたら足して下さい。SJ級ならなんでもOK。
そして、3000〜kmも走ったらいよいよオイル交換です。
オイル交換後走っていると一週間くらいかけて、みるみるエンジンがスムーズになります。

ハイ!これで慣らし完了!このモードだと低速で我慢するのはちょっとだけ。思いっきり走りながら早く本来の性能を出せる慣らし方法でした。

■まとめ
適正な当たり、歪を付けるため、ちゃんと回して負荷をかけるのがコツ。「ちんたら慣らしは百害あって一利無し」

最近、走りが悪い・・エンジンの回転が重い・・・中古車だけど・・・・エンジンに活を入れたい・・って言う方にはお勧めです。